これまで水、空気、食べ物のお話をしてきました。
第4回となる今回は、健康と「時間」の関係についてお話をしてみたいと思います。
健康と時間、と聞いて真っ先に思い浮かぶことは何でしょうか?
おそらく多くの方が“睡眠”を思い浮かべたのではないでしょうか?
近年、睡眠の重要性が見直され、テレビや単行本、雑誌などさまざまなメディアで取り上げられることも多くなってきましたよね。
もちろん睡眠は健康の質を大きく左右する大切なものです。
しかし、健康と時間の関係を考えたとき、何時間睡眠時間をとればいいのか、何時に寝て何時に起きるといいのかといったもの以外に、とても深い関係があるのです。
そしてそれは健康というにとどまらず、子どもの勉強効率を上げたり、仕事の生産性を高めたりといったパフォーマンスの最大化にもつながります。
ぜひ「時間」を捉えなおし、生活の質(QOL)を向上させていきましょう。
人は誰しも生体リズムを持っている
人は誰でも「時計」を持っています。
「体内時計」や「腹時計」といった言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか?
このような時計で周期性を持ったものが「生体リズム」です。
生体リズムには以下のようなものがあります。
○ウルトラディアンリズム(20時間より短い周期)
・睡眠周期(約90分周期)
・サーカタイダルリズム(約12.4時間周期)
○サーカディアンリズム(24時間±4時間周期)
○インフラディアンリズム(28時間より長い周期)
・サーカセプタンリズム(約7日周期)
・サーカルナリズム(約1か月周期)
・サーカニュアルリズム(約1年周期)
いかがでしょうか?
おそらく聞きなれない言葉もたくさんあると思います。
ウルトラディアンリズムは、20時間より短い周期であり、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す睡眠周期(約90分)や潮の周期(約12.4時間)などがあります。
また、潮の周期はサーカタイダルリズムと言われ、眠気の周期(AM2:00とPM2:00にピークがくる)などが例に挙げられています。
サーカディアンリズムは、地球の自転に連動した周期(約24時間で前後4時間を含む)であり、1日という最も馴染みやすい周期だと思います。
インフラディアンリズムは、28時間より長い周期であり、約7日周期のサーカセプタンリズム、月の公転に連動したサーカナルリズム(約1か月周期)、地球の公転に連動したサーカニュアルリズム(約1年周期)などが挙げられます。
カタカナ文字が並び、少し混乱してしまった方もいるかもしれません。
しかし、人には様々な周期の生体リズムがあって、その生体リズムが正常に働いていることが大切だ、ということを覚えてもらえば大丈夫です。
人のサーカディアンリズムは25時間!?
サーカディアンリズムは、「サーカ(おおよそ)」「ディアン(一日)」という意味で、日本語では概日リズムと呼ばれています。
そうです、おおよそ一日(24時間)リズムということです。
ちなみに人のサーカディアンリズムは24.5~25時間だと言われています。
勘のいいあなたなら気がついたでしょう。
これでは毎日1時間のズレが出てしまうではないかと。
しかし実際には、人はある方法でこのズレを調整することができます。
その方法とは、「朝日を浴びること」です。
朝日を30分程度浴びることで、体内時計をリセットして、生体リズムを24時間に調整してくれるのです。
もう少し詳しく言うと、2,500ルクス以上の明るさが必要と言われています。
晴天で日が差した屋外なら50,000~100,000ルクス、日が差していない曇り空でも屋外なら10,000ルクスあると言われているので、外に出れば天候に関係なく調整できます。
一方で部屋の中だと、一般的な蛍光灯で1,000ルクス程度なので、やはり体内時計をリセットし、生体リズムを調整するには、明るさが足りません。
そのため最低でもカーテンを開けて、朝日が入るようにした室内の窓際に行く必要があるでしょう。
生体リズムが狂うと健康被害を引き起こす!?
それでは、なぜ生体リズムがそれほどまでに大切なのでしょうか?
人は、時計遺伝子と呼ばれる遺伝子によって生体リズムを生み出しています。
これが乱れてくると、高血圧、高血糖によりメタボリックシンドロームになったり、ホルモンバランスが乱れたり、最悪の場合がんになったりと、様々な健康被害が発生すると言われています。
より身近な例を挙げてみましょう。
わかりやすいのが時差ボケです。
時差ボケは、その名のとおり時差によって体内時計の狂い、それにより倦怠感や不眠、頭痛など引き起こします。
女性であれば、月経周期の方が馴染みやすいかもしれません。
月経周期は約28日(正常範囲は25日~38日)と言われていますが、この周期が乱れると、経血量異常や頭痛、吐き気、めまいといった症状を伴ったり、無月経や不妊につながったりすることをご存知の方も多いのではないでしょうか?
さらには、うつ病を生体リズムの乱れが原因であるとする説もあります。
北欧にうつ病(季節性)が多いことはよく知られています。
緯度の高い北欧は、夏は太陽の沈まない白夜(あるいは日照時間が非常に長い)、冬は太陽の昇らない極夜(あるいは日照時間が非常に短い)になります。
冬の極夜にあっては、太陽の光を浴びられず、時間のズレを修正することができません。
これがうつ病の発症を招いているということです。
今年日本では、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う外出自粛に加え、梅雨の時期が例年より長くなり、朝日を浴びる機会が減ったものと推測できます。
このことと「コロナうつ」が増加したことは無関係ではない、といえるのではないでしょうか?
ここまでで、生体リズムが心身の健康に影響していることはご理解いただけたと思います。
生体リズムの波に乗った理想的な一日の過ごし方
まず朝起きたらカーテンを開けて朝日を取り込むこと、水を飲むことから始めましょう。
理想的には6時~7時に起床し、30分ほどのウォーキングを行うのが良いでしょう。
朝のウォーキングは、朝日を浴びて体内時計をリセットし、サーカディアンリズムを調整するだけではなく、ダイエットにも効果的です。
それは朝の空腹時には、食事で得たエネルギーではなく、蓄積されたエネルギーを利用するからです。
なお、以前お話したように、有酸素運動のやりすぎは身体の酸化(老化)を促進してしまうため、ほどほどにしましょう。
さて次は朝食ですが、食べた方がいいことは間違いありませんが、前日の夕食が遅くなってしまったとき(概ね20時以降)は、消化器官を休めるため朝食を抜くことも選択肢に入れるべきだと思います。
しかし午前中にお腹が空いて集中できないということにならないよう、できる限り前日の夜の夕食を早めに済ませてしまいましょう。
そして午前8時~10時に脳の活性状態がピークを迎えます。
この時間はクリエイティブな発想を行うのに最適な時間なので、ルーティンワークではなく、発想を要するようなことに時間を充てましょう。
12時から昼食をとる方が多いと思います。
このとき気をつけたいのが、糖質をとりすぎることです。
糖質をたくさんとるとグルコーススパイクという血糖値の乱高下が生じ、一時的に活動状態が高くなっても、その後急激に眠気が襲ってきたりイライラしたりするようになります。
そのため糖質の量や組み合わせて食べることは極力避けるようにしましょう。
食事をすると、消化の際に副交感神経が優位になり、活動から休息モードに切り替わります。
これに先にご紹介したサーカタイダルリズムの眠気がピークを迎えるため、14時ころに眠くなってくるでしょう。
このような理由から14~16時の時間帯が、最もミスが起きやすい時間帯とされています。
ミスを避けるために、15分~20分程度のお昼寝をするのが効果的です。
20分以上睡眠をとってしまうと、メラトニンが分泌され、本格的な睡眠モードになってしまいます。
こうなると夜中に無理やり起こされたのと同じになってしまい、逆に頭がボーっとしてしまうので、この時間には注意をしましょう。
さて、このようにお昼寝をして、眠気を乗り越えると、16~18時に再度脳の活性が高まる時間をつくることができます。
活動と休息のメリハリをつけて、一日の質を高めていきましょう。
そして夕食ですが、先にご紹介したように20時までには済ませておきましょう。
これは、ダイエットの観点から見ても重要だと言えます。
時計遺伝子の一つは、食事から摂取した脂肪を脂肪細胞に貯蓄し、より大きな脂肪細胞をつくる働きをします。この時計遺伝子が発現しやすい時間帯が夜の時間なのです。
入浴は就寝の1~2時間前までに済ませておくようにします。
身体の深部体温を一度上昇させ、それが下降するときに眠気がくるので、就寝直前の入浴は避けるべきです。
またノンレム睡眠中に記憶が固定されることがわかってきたため、暗記などの記憶したいことは就寝前に行い、さらに次の日に復習をすると格段に学習効果を上げることができます。
なお就寝前にテレビやスマートホンを利用する方も多いと思いますが、これはできるだけ避けるべきです。
ブルーライトのよう強い光を浴びると脳が昼だと勘違いする、さらにスマートホンは指先を動かすため脳を刺激し、せっかくの休息モードが活動モードに切り替わってしまいます。
これによりサーカディアンリズムがさらに1時間後退し、2時間のズレが生じるとする説もあります。
朝起きたときにすっきりとした爽快感が得られない方は、ぜひ就寝前だけでもデジタルデトックスを試してみましょう。
生体リズムを有効に活用しよう!
宇宙と我々はつながっているというと、宗教的で毛嫌いする方もいるかと思います。
しかし、今回お話したように、地球の自転・公転、月の公転と同様の生体リズム、そして太陽を浴びて体内時計をリセットし生体リズムを調整するといったように、少なからず宇宙の影響は受けているということです。
実に神秘的ですよね。
生体リズムをしっかりと整えて、生活の質(QOL)を高めていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。