自然治癒のチカラを活かす「肌断食」

2023.01.06

この記事を読んでいるあなたは、健康や美容への意識が高く、日頃からさまざまなことに取り組んでいるのではないでしょうか?
睡眠をしっかりととる、朝ミネラルウォーターを飲む、適度な運動をする、野菜や果物を意識して多めに摂る…これまでの記事でもたくさんの健康法をご紹介してきました。
また美意識の高い方は、こだわり抜いた洗顔料で顔を洗い、化粧水や乳液で保湿するなど、スキンケアに時間やお金を費やしているかもしれません。
以前、自然治癒のテーマのもとで、人間の持つ本来のチカラを引き出すことの大切さをお伝えしました。
自然治癒のチカラは、実は美容にも大きな可能性を秘めています。
その中で話題を呼んでいるのが、「肌断食」と呼ばれるものです。
そこで今回は、自然治癒のチカラを美容に活かす「肌断食」をご紹介したいと思います。

肌には無数の菌が住んでいる

わたしたち人間は、この世に生まれてからずっと、たくさんの菌とともに生きています。
菌は日常のあらゆる場面に存在しており、人工的な環境を準備しない限り無菌状態でいることはほぼ不可能です。
菌と聞くと、汚い、身体に悪いというイメージを持たれるかもしれません。
しかし、ヨーグルトや納豆などの発酵食品は身体(腸)にいいということは、あなたもご存じなのではないでしょうか。
その発酵食品には、ビフィズス菌や乳酸菌といった菌が入っていますよね。
すべての菌が悪いわけではないということです。
腸内細菌には、「善玉菌」という身体に良い影響を与える菌、「悪玉菌」という身体に悪い影響を与える菌、「日和見菌」という時と場合によって良くも悪くも影響を与える菌があります。
これと同じように、わたしたちの肌にはたくさんの菌が住み着いています。
これらの菌のことを“(皮膚)常在菌”といいます。
私たちの身体には、腸内細菌が100兆個以上、皮膚常在菌が1兆個以上も住み着いているとされています。
わたしたち人間を形作っている細胞でも60兆個ですから、いかにたくさんの菌が住み着いているのかわかると思います。
それだけたくさんいるなら、できるだけ身体にいい影響を与える善玉菌を増やそうと思うかもしれませんが、そんなに単純なものではありません。
実は、善玉菌であっても住み着く場所によっては身体に悪い影響を与えることもあるのです。
腸内細菌の理想の比率は、「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」と言われていますが、善玉菌、悪玉菌、日和見菌のそれぞれが、バランスを保っていることが大切なのです。
これは皮膚常在菌にも同じことが言え、バランスをしっかりと保ち、あるべき場所にあるべき菌が住み着いてくれることが大切なのです。
皮膚は、人間の身体で最大の臓器と言われることもあります。
それは、皮膚常在菌が外部からやってきて皮膚に付着する悪い菌やウイルスから私たちを守ってくれるバリア機能だけではなく、発汗するなどして体温を調整する機能、老廃物を排出するデトックス機能、フェロモン(におい)を発して異性を誘惑する機能等々、さまざまな機能を果たしてくれるからにほかなりません。
そして、その人間の身体の最大の臓器たる役割を果たすために、皮膚常在菌はとても重要な役割を担っているのです。

皮膚常在菌の役割

皮膚常在菌は200種類以上あるとも言われています。
代表的なものとしては、皮膚を弱酸性に保ちバリア機能に寄与する表皮ブドウ球菌・アクネ菌、病原性が高く、ときに炎症や化膿を引き起こす黄色ブドウ球菌などがあります。
このほかにもたくさんの種類の皮膚常在菌がいるわけですが、常在菌の主な役割としては以下のとおりです。

〇拮抗作用
拮抗作用とは、常在菌がバランスよく平衡状態を保っているところに、新たな病原菌がやってきても、その病原菌の働きを阻止され、定着することができない現象のことを指します。
簡単に言えば、常在菌のバランスが保たれている限り、毒性の高い菌が付着してもバリアしてくれるということです。
裏を返せば、常在菌のバランスが崩れると、容易に悪い菌に攻撃を許してしまうということが言えるでしょう。

〇免疫刺激作用
免疫刺激作用とは、常在菌が免疫を刺激して免疫力や抵抗力を強くする作用のことを指します。
潔癖で育てた赤ちゃんがアレルギーになりやすい、身体が弱いと言われるのは、この免疫刺激作用の恩恵を受けることができないからです。
菌とともに生きることが、免疫力を向上させるのです。

〇静菌作用
静菌作用とは、菌が増えたり育ったりするのを抑制する作用のことです。
常在菌のバランスを平衡状態に保ってくれる大切な機能なのです。
以上のような常在菌の働きを引き出すには、平衡状態、つまりバランスを崩さないように気をつけなければならないということです。

常在菌のバランスを崩す原因

皮膚常在菌が、絶妙なバランスを保つことで機能していることはご理解いただけたと思います。
では、どのような原因で、このバランスを崩してしまうのでしょうか?
その主な原因の一つが、「洗いすぎ」による乾燥です。
「洗いすぎ」というのは、石鹸や洗顔料、クレンジングなどで洗う回数が多かったり、1回あたりの洗う時間が長かったり、また長時間お湯につかったりすることも含みます。
石鹸や洗顔料、クレンジングを使用すると、肌はアルカリ性に傾きます。
さらにクレンジングは、まだ機能している角質層まで洗い流してしまい、表皮ブドウ球菌をはじめとした常在菌の居場所を奪い、皮膚のバリア機能を低下させてしまいます。
洗浄力の高い石鹸や洗顔料、クレンジングにより常在菌の多くが洗い流されてしまうとともに、常在菌が増えるためのエサとなる皮脂もなくなってしまいます。
また、長時間の入浴でも、じわじわと皮脂がお湯に溶け出してしまい、必要な皮脂が足りなくなるため、皮膚のバリア機能が低下してしまいます。
皮膚常在菌は乾燥に弱く、皮脂や汗のない環境では増えることができません。
こうなってしまうと、肌はなかなか弱酸性に戻ることができず、病原菌の好むアルカリ性の状態が維持されて攻撃を受けやすくなってしまうのです。
結果として、肌が炎症を起こしたり、かゆみや湿疹を起こしたりしてしまいます。
常在菌のバランスを崩す原因はこのほかにも、運動不足によって汗腺の機能が低下したり、ストレスによって身体の免疫機能が低下したりといったことが考えられます。
菌は、その種類によって、弱酸性で増えるもの、アルカリ性で増えるもの、どちらでも生きられるものがあります。
身体に悪い影響を与える病原菌の多くは、アルカリ性でよく増え、外部に毒性のあるトゲを持っています。
人間の身体の中は弱アルカリ性に傾いているため、万一体内に侵入してしまうと、病原菌は容易に増殖して、その毒性を発揮してしまいます。
皮膚常在菌のうち善玉菌は、弱酸性の環境でよく増えるとともに、自らも弱酸性の皮膚を保つための働きを果たします。
この肌の健やかな環境を整えるための方法が、「肌断食」なのです。

肌断食の実践

肌断食とは、その名のとおり「肌に“余計な刺激”を与えるのをやめること」を言います。
もう少しわかりやすく言うと、石鹼や洗顔料、クレンジングで洗ったり、化粧水や乳液などのスキンケア用品、さらにはメイク用品などを使ったりする、いわゆるスキンケアの一切を絶つ方法です。
自然治癒の考え方に根差したものであり、肌本来の機能を最大限に引き出すための方法であると言えるでしょう。

〇洗顔・洗体
洗顔は、ぬるま湯(体温程度、もしくはやや低め)で優しく肌に押し当てるようにします。
力を入れてゴシゴシ洗ったり、シャワーから直接顔に当てて洗ったりすることは極力避けましょう。
また洗う回数も少なく、数回程度に抑えることが大切です。
ぬるま湯や水での洗顔でも、常在菌は流れ落ちてしまったように感じることがありますが、毛穴の中などに残っていた菌がすぐに増えて、30~120分ほどで元の状態に戻ってくれます。
これまで洗顔料などを使用してきた方は、それでは汚れが落ちないのでは?べたつきが取れないのでは?と不安に思うことでしょう。
そもそも汚れをすべて落とす必要はないのです。
なぜなら、皮膚が本来の力を取り戻せば、排出機能が正常に働き、汚れを自然と押し出してれるからです。
そして、皮脂も体温で溶け出るくらいですから、人肌ほどのぬるま湯で十分洗い流すことは可能なはずなのです。
どうしても石鹸等を使いたいときは、弱酸性のものや余計な添加物が入っていないものを選び、極力肌に刺激を与えないようにしましょう。

〇保湿
こちらも大原則として、化粧水、乳液などのスキンケアは行いません。
空気が乾燥しているなどして、どうしても肌のカサカサが気になる場合には、純度の高い白色ワセリンを部分的に少量塗布する程度にしましょう。
あくまでも肌にダメージを与えないよう注意して洗顔を行う、皮脂を落としすぎない、このことを守れば保湿はそれほど重要ではない、ということを覚えておきましょう。

〇メイク等
ここまでくると、本来的にはメイクや日焼け止めもするべきではない、ということはお分かりいただけると思います。
どうしてもメイクしなければならないときは、ぬるま湯でも簡単に落とせるものやオーガニック成分でできた肌に優しいものを選ぶようにしましょう。
また、日焼け対策としては、日傘や帽子、サングラスなどを活用して、肌に直接塗る対策を避けるようにしましょう。
肌断食を実践すると、はじめのころは肌トラブルが多くなることもあります。
毛穴の角栓が目立ったり、黒ずんだり、にきびができて肌荒れがひどくなったり、肌がガサガサしたりといった症状が出ることもあります。
これは「好転反応」といい、肌が本来の機能を取り戻す過程で起こる一時的な肌トラブルである場合がほとんどです。
これまでいかに洗顔料や化粧水などで、肌のダメージを覆い隠してきたかということを実感するかもしれません。
しかし、かゆみや炎症が出ることがあり、その症状がひどい場合には、肌断食を中止して、皮膚科を受診することをおすすめします。

肌断食を取り入れて健やかな肌を手に入れよう

これまで美容にこだわってきた方は、肌断食を懐疑的に捉えているかもしれません。
一説によると、皮膚につけるものの50%は血液に入り込むとも言われています。
あなたが使っているスキンケア用品は、体内に入り込んでも大丈夫なものでしょうか?
今一度肌に触れるものを見直してみましょう。
スキンケアの第一歩は洗顔から、洗顔をしたら化粧水をつけ、乳液をつけ、…このように信じてきませんでしたか?
化粧品会社は、ビジネスで商品をつくっているということを忘れてはいけません。
肌が本来持っているチカラがあれば、スキンケア用品はほとんど必要ありません。
そしてそのチカラを最大限引き出すには、やはり自然治癒力を高める生活習慣が大切になってきます。
運動、栄養、休養の生活習慣を大切にしながら、肌断食を実践して健康も美容も手に入れましょう。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。