今年こそは健康的な生活を送ろう、と決意を新たにしている方も多いのではないでしょうか?
健康への取り組みは、一過性のものではなく、今後の人生で継続的に取り組んでいく必要があるということは周知の事実です。つまり、取り組みを「始める」こと以上に、それを「続ける」ことが大切なのです。
今回は、2025年にスタートして健康への取り組みを始めようとしている方へ、新年の抱負を成就させる方法をご紹介したいと思います。
なぜ新年の抱負は達成しにくいのか?
私たちにとって新年を迎えることは特別なことであり、「今年こそは健康的な生活を送ろう」、「ダイエットを成功させよう」と決意する人はたくさんいます。しかし、その決意もつかの間、いつの間にか元の生活に戻ってしまう人も少なくないのではないでしょうか。
アメリカで行われた調査※1では、一般的なアメリカ人は、新年に入って約7週間で健康に関する決意を諦めてしまうということが明らかになりました。少なくとも週1回運動するアメリカ人2,000人を対象とした調査※1では、健康関連の決意をどれだけ忠実に守っているかを調査したところ、およそ3人に1人が1か月足らずで諦めてしまうということがわかりました。
多くの人は、「不健康」だと考えている大好きな食べ物を我慢してから、わずか14日ほどで恋しくなってしまうと指摘されています。なぜ、新年の抱負は達成するのが難しいのでしょうか?理由はいくつか考えられますが、代表的なものをご紹介します。
目標設定が高すぎる
新年の抱負は、誰からも強制されることなく、自分自身で自由に設定できるため、現実と乖離した目標を設定してしまいがちです。
例えば、毎日間食している人が「お菓子を一切食べない」といった目標を立てたり、全く運動習慣を持たない人が「毎日1時間以上運動する」といった目標を立てたりすると、すぐに挫折してしまうでしょう。
さらに完璧主義な人であれば、ほんの少しの失敗で、「また来週から仕切り直そう」、「来月の1日からにしよう」といったようにして、どんどん先送りにしてしまいがちです。
誤った知識を基にしている
情報社会と言われる現代において、SNSをはじめとして専門家ではない一般の人が発信しやすくなったことで、誤った知識が広がってしまうという問題があります。
先の調査※1では、6人に1人が高カロリーの食品はすべて「不健康」であると誤認していて、3人に1人が「健康的な食事=特定の食べ物を摂ること・特定の食べ物を完全に避けること」を意味すると考えていることがわかりました。
さらに5人に1人は、栄養バランスのとれた健康的な食事は、美味しい食べ物を犠牲にすることであると認識しているというのです。日本でも、特にダイエット界隈では、炭水化物・脂質は悪で、たんぱく質をたくさん摂るべきだと考えている人が少なくないのではないでしょうか。
しかし、これまでの記事をお読みいただいたあなたであれば、これらの認識が誤りであることはわかりますよね。つまり、本来やる必要のない事までやるという極端な取り組みが、その継続を困難にしている側面があるのです。
具体的な行動まで落とし込めていない
「健康になりたい」という漠然とした思い、抽象的な目標では行動に移すことが非常に難しいでしょう。
例えば、「運動する」よりも「週3回、30分のウォーキングする」の方が、行動しやすいというのは明らかですよね。更には「月水金の朝6時~30分間、最寄りの○○公園でウォーキングする」まで具体的であれば、確度を高めることができます。
そして、もう一つ大事なことは、もしもの場合を想定して、代替案を用意しておくことです。
夏場の酷暑、冬場の大雪、台風をはじめとした大雨など、自分にはどうすることもできない要因で、習慣を中断せざるを得ないことがあります。そのときに代替案を準備していなければ、中断した習慣を再開するハードルが高くなってしまいます。
そうならないようにするために、代替案を準備して、同じ曜日、同じ時間に家の中でもできる「サーキットトレーニングを5セットやる」のようにすると、習慣を途切れさせることなく続けることができます。
取り組む環境が適していない
人間は共感の生き物という表現がありますが、人間にはミラーニューロンと呼ばれる神経細胞があり、他者の行動や感情を自分事として捉えるメカニズムが備わっています。
社会的なつながりの中で生きる私たちにとって、一緒に過ごす人、周囲の環境が非常に大きな影響力を持っているのです。
例えば、始業時間に厳しく、終業時間にルーズな職場であれば、仕事後の時間が確保できず、習慣化するのは難しいでしょう。
また、人生を悲観するようなネガティブなことばかり言う人と一緒にいれば、いつの間にか自分自身も人生を積極的に楽しむモチベーションがそがれてしまうでしょう。
自分の達成したい目標がある場合には、それに適した環境を選択、勝ち取ることが重要なのです。
短期的目標と長期的目標のバランスが悪い
一般的に、私たちは短期的には目標を過大に、長期的には目標を過小にしがちと言われています。例えば、自分のベスト体重が現状の-10kgだった場合、2か月で達成しようといったように、すぐに結果を求めてしまいがちです。
しかし、ダイエットをしたことがある人は体験しているかと思いますが、取り組み始めは順調に減量していたのに、あるとき停滞してしまうことがほとんどです。そのときに短期的に無理のある目標を設定していると、たちまちモチベーションが下がって、やめてしまうことでしょう。
短期的な目標と長期的な目標をバランス良く設定することが大切なのです。その目標設定のコツは後ほどご紹介します。
新年の抱負が達成できない理由を5つご紹介しましたが、あなたもどれかには心当たりがあったのではないでしょうか。新年の抱負が達成できないのは、あなたがルーズな人間だからではありません。
目標設定の仕方、行動計画の有無、環境要因、心理的な要因など、様々な要素が複雑に絡み合っていて、それらの対処法を講じていないだけなのです。
新年の抱負を達成するための秘訣
先の調査※1では、短期的な健康目標を好む者と比べて、長期的な健康目標を好む者が4倍を超えるという結果になったといいます。つまり、多くの人にとって、「成功」とはその取り組みがどれだけ長く続くかが重要であるということがわかります。
この調査※1では、特定の食べ物を完全に避ける、急激に体重を減らすといった極端な取り組みは、長くは続かないということを学び、少しずつ変化を加え小さな目標を繰り返し達成する方が習慣につながっていることに気づいたようです。
これらのことも踏まえ、新年の抱負を達成するために、以下の点に気をつけてみましょう。
「健康」を定義する
以前の記事でも紹介しましたが、WHO(世界保健機関)が定めるWHO憲章では、健康を次のように定義しています。
“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.” ※2
(健康とは、身体的、精神的および社会的に完全に良好な状態であり、単に病気や病弱の存在しないことではない。)
これは、概念として正しいということはわかりますが、自分の健康を考えたときに何をどうしたらいいのかわかるでしょうか。きっとわからないのではないでしょうか。だからこそ、自分にとっての「健康」、そして「成功」を定義しなければなりません。
何もないところでつまずくことがないようにすることでしょうか、日中に眠気に襲われないようにすることでしょうか、はたまた体脂肪率やBMIを適正にすることでしょうか。自分が求めているものを掘り下げて、しっかりと定義してみましょう。
具体的な目標を設定する
定義をした後は、それを具体的な目標にするためのステップが必要です。
目標設定に有効な方法の一つが、「SMART」という方法です。
S:Specific(具体的な):具体的な目標を設定する
M:Measurable(測定可能な):数値化するなど測定可能な目標を設定する
A:Achievable(達成可能な):現実的で無理のない目標を設定する
R:Relevant(関連性のある):自分の価値観や生活に関連する目標を設定する
T:Time-bound(期限が明確な):目標達成までの期限を設定する
自分が設定した目標が、SMARTの条件を満たしているか確認してみましょう。そして、短期的な目標と長期的な目標のバランスを考えることも重要で、先程もご紹介したとおり、一般的に短期的な目標を過大評価し、長期的な目標を過小評価する傾向があると言われています。
そうならないようにするため、例えば、1年後の成功目標を100%とした場合、最初の3か月で10%、次の3か月で20%、次の3か月で30%、最後の3か月で40%のように振り分けることも有益です。兎に角やることを細分化して小さく始める、そして小さな成功を繰り返して習慣を身につけていくのです。
行動計画を立てる
具体的な目標を設定したら、次に行動計画を立てましょう。
●行動を細分化して、具体的な行動をリスト化
毎日30分走るという目標を設定した場合、最初は20分にする、10分にするというように時間を短くすることも考えられますが、もっと小さくする、例えば靴を履いて玄関を出るといったところまで小さくしても良いでしょう。
●スケジュール管理
カレンダーや手帳に行動計画を書き込み、実行するタイミングを明確にしましょう。習慣にすることを考えれば、できる限り毎日同じ時間に同じ行動を行うようにすると良いでしょう。
また、天候や急な仕事などの外部要因で計画通りに進まないときの代替案を準備しておくと、習慣が途絶えてしまうことを防ぐことができるでしょう。
さあ、健康的な生活を始めよう!
新年の抱負を実現しようと取り組む過程で、ときに挫折してしまったり、困難にぶつかったりすることが少なくありません。
しかし、それは失敗ではなく、成功への道を新たにするチャンスでもあります。上手くいなかないと感じたときは、まずその原因を見極めてみましょう。定義が曖昧ではないか、SMARTの条件を満たしているか、行動計画をもっと細分化できないかなど、冷静に分析してみるのです。
この過程を通して、次にやるべきことが自然と浮かび上がってくるでしょう。大切なことは、挫折でも健康管理でも、一朝一夕解決するものではないということです。日々の小さな努力を積み重ねることが、長期的な成功につながるのです。
だからこそ、成功や失敗に一喜一憂するのではなく、良かったところ悪かったところを見つめ直し、あなたの進むべき道を一歩ずつ進んでいきましょう。健康的な生活の基盤を整えることで、さらなる目標に挑戦するためのモチベーションが湧いてくるはずです。
2025年こそ、無理なくあなたに合った健康的な生活をスタートさせましょう。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
<参考文献>
※1 SWNS、“How long will Americans stick with their health-related New Year’s resolutions?: Poll” Jan. 10, 2024、NEW YORK POST、https://nypost.com/2024/01/10/lifestyle/how-long-will-americans-stick-with-their-health-related-new-years-resolutions-poll/ 、2024年12月23日閲覧
※2 WHO、“Health and Well-Being”、https://www.who.int/data/gho/data/major-themes/health-and-well-being 、2024年12月23日閲覧